MS法人のある医療法人ですが、新規診療所(分院)を開設しようと都道府県に定款変更認可申請をしていますが、都道府県から、書類をいろいろ請求されて、なかなか認可されません。どうしたらいいでしょうか。
MS法人とは
MS法人(メディカルサービス法人)とは、医療施設を開設する個人や医療法人などと密接な関係がある他の法人をいいます。例えば、MS法人の建物を医療法人に賃貸するとか、MS法人の医療機器を医療法人にリースしたり、MS法人が看護師や事務員を派遣するなどを行う等して、節税や医療法人が行えない事業(医療法第42条の反対解釈)を幅広く行うために医療施設を開設する個人や医療法人の役員等によって、医療法人とは別個に設立する法人です。
そもそも医療法人がMS法人を設立することは認められるのであろうか
医療法人は営利を目的とした開設はできない(医療法第7条第5項)し、剰余金の配当は禁止されています(医療法第54条)。また、保険診療の医療機関について利益は、税金からも賄われている診療報酬に基づいています。それをMS法人に流用することは不適切です。医療法人の役員がMS法人を通じて、実質的に医療法人の利益を分配したり、MS法人が医療法人の理事長や管理者を雇用して実質的経営権を有することは許されません。 それゆえ、MS法人を認 めない都道府県もあります。もっとも、平成24年3月30日医政総発0330第4号医政指発0330第4号で最終改正された「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」で、医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人の役職員も以下の場合認めています。 1.①物品購入、賃貸、役務の提供の商取引がある②規模が小さい営利法人の③開設者である法人の代表者でない役職員で③直ちに役職員を第三者に変更することが困難であり④契約内容が妥当である場合 2.①土地又は建物の商取引がある②規模が小さい営利法人の③開設者である法人の代表者でない役職員で③直ちに役職員を第三者に変更することが困難であり④契約内容が妥当である場合 1.2の場合で、開設者である医療法人の役員の過半数を超えず、医療機関の非営利性に影響を与えない場合 3.営利法人等の金額が少額な場合 この場合についてはMS法人も認められることになります。 なお取引の金額が、当該事業収益又は事業費用が1000万円以上で、かつ総事業収益また総事業費の10%を占める場合等については事業報告等提出書に関係事業者との取引の状況に関する報告書に記載して都道府県に提出することを要します。
MS法人のある医療法人の新規診療所(分院)の開設には、通常の定款変更認 可申請書の添付書類以外何を求められるのでしょうか
通常の定款変更認可申請の添付書類は①定款(寄附行為)変更認可申請書②定款(寄附行為)の新旧条文対照表③新定款(寄附行為)の案文④定款(寄附行為)を変更することを決議した社員総会(理事会、評議員会)議事録⑤開設しようとする診療所等の概要・図面(周辺の概略図、敷地図、フロアの全体図、建物の平面図)⑥賃貸借契約書の写し・覚書、不動産の登記事項全部証明書(3ヵ月以内のもの)⑦管理者の就任承諾書・医師(歯科医師)の免許証の写し⑧事業計画書、借入をする場合は金銭消費貸借書の写し、内装工事や医療機器等の見積書又は契約書の写し⑨2年間の予算書 収入予算書・支出予算書、職員給与費内訳書(いずれも各施設毎)⑩直近の事業報告書等提出書⑪直近の勘定科目内訳書(税務署に提出した書類一式)⑫医療法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)(3ヵ月以内のもの)⑬新役員の役員就任承諾書、履歴書、印鑑登録証明書(3か月以内のもの)⑭医療法人の概要
ですが、MS法人のある医療法人についてはさらに①実質的に剰余金配当(医療法第54条)を行っていないか②実質的な経営主体は医療法人ではなく、営利法人(医療法第7条第5項)ではないか、の説明聴取だけでなく、判断する資料を要求される可能性がございます。(平成24年3月30日医政総発0330第4号医政指発0330第4号で最終改正「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」)まず、①実質的に剰余金配当にあたらないか判断するためには、(1)MS法人の登記簿謄本を要求されて、役員が兼務されていないかの確認(2)誓約書が要求される(3)事業報告書に添付される「関係事業者との取引の状況に関する報告書」で、取引があれば、取引額が相当の金額かの資料を要求される等の場合がございます。 ②実質的な経営主体は医療法人ではなく、営利法人(医療法第7条第5項)たるMS法人ではないか判断するため、確認すべき事項として(1)医療法人の医師たる理事長に経営の意思を有するのか(2)医療法人の医師たる理事長や管理者はMS法人に雇用されているのか(3)医療機関の人事権は誰が有するのか(4)医療機関の収益、資産、資本の帰属主体、損失、負債の責任主体は誰か等でありますが、そのため①の資料や確定申告等を求めてくる場合もございます。
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